南国の地にも、つわものどもが夢の跡         〜沖縄ちょぼ旅 BLOG 49〜

機嫌良く過ごせた残波岬から一路 「座喜味城跡(ざきみじょうあと)」を目指すため、県道6号線をてくてくと読谷BTまで戻り、バスで高志保まで乗り継ぎ座喜味城跡公園に到着。これに要した時間90分。とにかく歩きでの沖縄は広いのだ。


目の前に広がる公園のどこかに城跡があるはずだ。案内板を探したが周りには見当たらないので、公園奥につづくプロムナードに沿って歩くことにした。

歩くにつれ高度を増すがいっこうに城壁などは現れず、深い緑の胸に潜り込むように道がつづくばかりだ。

実は歴史が好きなので、昨夜はこのグスク(城)については予習をしてきた。

この城を造った”護佐丸”という男はこの一帯を領していた豪族(琉球では按司という)であった。

15世紀初頭の話である。やまと本土では南北朝が統一されたばかりの室町幕府時代の頃だ。

琉球では群雄割拠の時世であったが、初めて巴志(はし)と云う名の男が統一を果たすことになる。

この商才に長けた巴志を、右腕となって統一を助けたのがこの護佐丸で、琉球史にいきなりその名が登場することになった。


まるで信長亡き後、商才と人間学に長けた秀吉の天下取りを助けた福島正則や石田三成のようではないか。やはり彼ら福島や石田も名門の血統ではなく、護佐丸同様、忽然と歴史上に登場している。

そんな護佐丸の手ずから造った城がどんなものか見たくなるのが当然というもの。しかも予習で知ったのだが彼は城造りの名手らしい、いよいよ興味がつのる。

空にかぶるような緑の葉陰を抜けるといきなり右手に布積みの城壁が出現した。

かなり唐突な感で出会った城壁であったが、それは5mはありそうな、独特なカーブをもった石壁であった。

城壁の向こう側から城の説明をする大声が降ってくる。ガイドか誰かが解説しているようだ。

郭内に入る石門を見つけた。形の整った上品な風情の拱門(アーチ)である。


門をくぐり城壁内に入城すると正面にはもうひつの拱門が見えた。本丸へとつづく門だ。この城は小ぶりな二連郭構成つまり本丸と二の丸だけの山城なのである。

護佐丸は巴志を助け、統一の仕上げとなる北山の今帰仁城(なきじんじょう)を攻め落とした。この地よりかなり北部にある大城である。統一を果たした巴志の依頼で、しばらくの間その攻め取った北山の城に北山監守として駐在することになる。

護佐丸はこの時期に座喜味城の造成を始めたのである。座喜味に近い山田に父祖伝来の城があったがその城の石を再利用し、勢力下にあった喜界島や沖永良部島などの民にも手伝わせ築城している。

    座喜味城、一の郭(本丸)への出入り口となるアーチ門から見た二の郭の風景

最も高所となる「一の郭」内には記念石灯篭が残されており、中央部には建物跡の石印が置かれていて城の規模が判る。また一の郭城壁は登ることができるようになっていた。

先ほどの大声の主が城壁上にいた。学生と思しき若者6人が取り巻くように話に聴き入っている。ゼミナールの真っ最中といったところか。

壁の厚さがかなりたっぷりとあるので、城壁に上がると戦火の際には偉丈夫が走りながら楽にすれ違うことができそうなほどに広い。


何よりも特徴のある波うつカーブが美しい城壁は、敵が迫った時に横矢を射れるようにとの戦略から生まれた造形だという。

そして今なお健在なのは、眺望の素晴らしさだ。

南西には那覇方面、さらにその西には洋上にうっすらと慶良間諸島が遠望でき、北に展開する東シナ海には伊江島・伊是名島がくっきりと浮かぶ。

護佐丸の見た風景はどんなものであったのか。

標高120mのこのあたりは今でも鬱蒼とした濃い緑の樹林に囲まれているが、当時は原生林が覆う小高い台地に近い環境ではなかったろうか。

北山監守の任を解かれた護佐丸は造成されたばかりのこの座喜味城に戻り、読谷山の按司(あぢ)として18年間居住している。


しかしその後、首里王府の命という形で、王府のある首里に近い中城(なかぐすく)へ移封となり城代えをしている。琉球王の巴志と共に戦った護佐丸は王位をうかがうほどの実力者だったのだろう。

琉球王位を継承していた巴志の七男になる泰久はそれを恐れ、機先を制するように勝連城主を使って護佐丸のいる中城に夜襲をかける。そして....ついに護佐丸は自刃した。1458年のことだった。

城壁上からの景観、本丸に相当する”一の郭”

「夏草や兵どもが夢の跡」 芭蕉が源義経の終焉地となった高館(たかだて)の丘を訪れた時に、義経主従を儚み詠んだ有名な句だ。

南国の地にも、漢(おとこ)たちの夢やロマンの跡はさまざまなところに色濃く残っている。時には感傷過多になりながらの古跡訪問も興趣が変わり面白い。


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