沖縄の海に太陽神  〜沖縄ちょぼ旅 BLOG 52〜

サルバドール・ダリの作品にやっと会うことができた。海洋博記念公園の中央ゲートからほど近い場所に建つ 「海洋文化館」 2階の一郭に展示されていた。

ダリの彫刻を収納したガラス・ケースが部屋の中央にたったひとつだけポツンと置かれ、作品のそばにはセキュリティーガードがひとり、静かに脇を固めている。

"Sun God Rising In Okinawa" と題されたダリの彫刻作品

銀色に輝く人魚の形をとった女神が、沖縄の珊瑚に彩られた波間から昇る姿が表現されていた。ダリが71歳の時の作品である。往年のシュールさは無いものの、銀材などを使用しての艶やかさは健在だった。

1975年、沖縄のこの地で開催された国際海洋博覧会に参加したスペインが、自国ブースに展示するため制作依頼したものである。ダリは沖縄が太平洋戦争の凄惨な舞台となったことを承知しており、恒久平和の願いを込めて制作にあたったとある。

今回の展示企画は海洋博以来というから30年以上ぶりの里帰りになる。そんな貴重な作品の出陳にもかかわらず、会場はひっそりとしていた。

本国スペインの彼の郷里フィゲレスにはダリ劇場美術館と隣接した宝飾館がある。

そこはフランス国境に近くバルセロナから電車で2時間もかかるところだが、世界各国からの訪問者が引きも切らず長蛇の列をつくると聞く。

ダリと云えば、あの柔らかくゼリーのようになった時計が枝にかけられた絵画 「記憶の固執」があまりにも有名だが、筆者はなぜか絵画よりもはるかに彫刻や宝飾工芸の方に惹かれる。

シュールなモチーフもさることながら彼の創出する微妙な曲線は観るものを強く引き込む。


建築家のアントニ・ガウディも空中に、えも言われぬ曲線を描き出す。それぞれ世界も個性もまったく別のものだが、曲線の持つ妖しい魅力はジャンルを凌駕する。スペインという地は曲線の天才が生まれる土壌なのだろうか。

驚くことに堪能するまでの40分ほどの時間のあいだ、ただの一人も来場しなかった。ひとりの余人も交えず、ひとつの作品と40分ほども対峙できた経験は初めてであった。しかもその作品は紛れもないダリの彫刻である。

このことを喜んでよいものか、残念に思うものなのか複雑な気持ちが交錯するなか会場を離れた。展示室を出るとき、一言も話さなかったセキュリティーと目が合った。お互いの表情にうっすらと笑顔が宿ったように感じた。

    展示会場になった海洋文化館

※なおこのサルバドール・ダリ企画展は無事終了し、作品も滞在期間を終えスペインに戻っている。現在沖縄関係者により、この作品の恒久的沖縄所蔵を実現するべく努力中とのことだった。

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