エメラルドビーチの潮風に吹かれて           〜沖縄ちょぼ旅 BLOG 54〜

美ら海水族館を出て海岸側へ下る長いエスカレーターに乗った。水平線にはうっすらと伊江島の島影が浮いていた。午後深くなっているが、いまだ陽射しは衰えず波立つ海面でキラキラと踊っている。

500mほど北にあるというエメラルドビーチへと歩いていると、海亀ばかりが泳ぐ水槽がいくつも並んでいた。”アオウミガメ”、”タイマイ”、”クロウミガメ”、”ヒメウミガメ”....海亀だけでこれほど種類があるのかと思うほど集められていた。

ゆらりゆらりと涼しげに泳ぐ姿を上から覗き込んでいたら、違う位置からも見学できることを発見した。

ここの施設も水槽底部の横に観察室が設けられており、そこからも観賞できるような設計であった。


産卵時以外陸上にはあがらない海亀。今ではどの種の海亀も世界の絶滅危惧種のリストに指定されているという。

江戸の昔より ”タイマイ” の甲羅を張り合わせ作られる見事な細工の玉かんざしなどが、吉原の一流花魁(おいらん)の髪を飾っていた。ますます べっ甲の装飾品が貴重になってゆくのだろう。

このウミガメ館からすぐのところに「亀の浜(カーミヌハマ)」という名の浜辺があった。遊泳禁止になっているが、浜の表情に変化がありとても綺麗なポイントである。

砂浜の両側が岩礁で閉じられ、岩場の上には多種の植物がたくましく繁っている。季節ごとに色づく花や実をつけそうな景色だ。本当に小さなプライベートビーチと云ってもよい場所だった。

          小さな入り江のような「亀の浜}

なおも北へ進むと今度は 「マナティー館」 なるものが建っていた。この海洋博記念公園がぜいたくなほどの敷地を余すことなく最大有効活用していることが実感される。

さてマナティー館だが一度は通り過ぎたものの、やはり気になり Uターンをした。過去一回だけ見たことがあるが、その時はどこから見ても人魚のモデルになった生物とは思えなかったのだ。

 マナティー館                    メキシコから贈られたアメリカマナティー

今回はじっくり観察したのだが、どんなに想像をたくましくしても人魚にはたどり着けなかった。草食ほ乳類のマナティーの性格はとても穏やかで平和志向、決して他の生物を襲わないとあった。にもかかわらず、このマナティーは海亀以上に種の絶滅が深刻で危惧されている。

我々も少しはマナティーを見習ったほうがよいのだが、瞬間学習はできても持続せず過ちを繰り返すのが人類。残念ながら、そのなおしようのない悪しき本能は歴史が証明している。

今も自然保護で集まった世界会議で展開するのは国益主張の論争ばかり。集まった目的の第一主題は横に置かれたままの議場風景が報道されたりしている。もっとも滑稽な生物は人類だ。


マナティー館から200mほど北に歩くとしだいに緑が多くなり、小さな森のような茂みの隙間から白い砂浜がちらちらと見えてくる。

”オオハマボウ”という常緑樹が巻貝のような黄色い大きな花をつけていた。

芝が整備された公園のような区域に入り、大きくカーブしているところを左へ曲がるとやっとエメラルドビーチが出現。

このビーチは南北に大きく広がった海洋博記念公園の北の終着ポイントでもあった。


遠浅の白い浜辺に出ると海上を渡ってきた潮風が顔をなでてゆく。やや湿気を帯びてはいるが首すじを抜ける風の強さが心地よかった。

ビーチでは浜に立てたコートで4人の若者がビーチバレーに熱中している他は、ひとにぎりの遊泳客が点在する程度であった。ここがあまりに静かで、水族館での人混みがまるで嘘のよう。

どこの位置から眺めても白砂と海がフラットに広がっており、心ばかりの樹木以外岩礁ひとつ無く変化に乏しい浜辺である。リゾートのような美しさはあるものの、人工ゆえのやや無機質な表情を見せる。

盛りを過ぎるときに放つ強い陽射しが海面を焼いている。本日の終着駅になるこのエメラルドビーチでゆったりと休息をとった。

ある外国の港町にあった言い伝えに、海辺にいると一日のある短い時間帯だけ自分の帰りたい過去への扉が開くという。

その時間帯を土地の老人は風の止まる朝と夕の凪(なぎ)の瞬間だと云い、若者は潮の干満の交代する瞬間だと主張した。

つまり若者の主張は、潮の干満は月の引力と地球の自転による遠心力のなせる技であり、地球の自転は24時間、月が地球を1周するのは24時間と50分かかるわけで、潮目の変わるこの余分の50分間だと云ってはばからなかった。

港町の住人が若者の主張の方がありえると口ぐちに噂をするようになった頃、凪だと主張していた老人が町から消えてしまう。そして数年後、空瓶に入った老人の手紙が岸に流れ着く。そんな民話だ。

このエメラルドビーチでも今は風が止んでいる。海風から陸風へ変わる凪になったようだ。


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