初めて出会うマングローブの大自然          〜沖縄ちょぼ旅 BLOG 73〜

「遠〜いッ!」 バス停「慶佐次(げさし)」を降りた時の偽らざる感想である。

那覇BTを出発して3時間半もかかってたどり着いたのだ。往復だけで1日の3分の1を費やしてしまうのである。新幹線なら東京から大阪まで行ってお釣りがきてしまう。

バス移動もそれなりに楽しいのだが、目的地での行動時間を一挙に削られてしまうこと、それがとても大きなロスと感じてしまった。

この2ヶ月ものあいだバス旅行にこだわって廻ってきたが、本島北部をバスで回るにはそろそろ限界になってきたのだろうか。そんなことを考えながら国道331号線を歩いていると大きな河とそこに架かる橋が見えてきた。

橋の名は「慶佐次大橋」、河の名は「慶佐次川」。とてもシンプルで覚えやすいネーミングだ。

橋の下ではカヤックの集団が漕ぎ方の実習中で、楽しげな笑い声が水面を滑ってゆく。その先にはマングローブが群生していた。初めて見るマングローブだった。

                     河の両側を覆うように広がるヒルギのマングローブ林

緑色の絵具をあたり一面にぶちまけたようにマングローブが広がっている。

昨夜予習した情報によると、10ヘクタールとあった。東京ドーム2個分の広さである。

3時間半のモヤモヤがどこかへ消え、とたんに楽しくなってきた。

アイポッドから流れてきた音もちょうどいいBGM になった。アル・ジャロウがゆるく "This Time" と唄っている。

さっそくマングローブへと向かうと「ふれあいヒルギ公園」というところを通り抜けることになった。

公園の一角で、カヤックに使用するダブルパドルを持ちながら講習を受けている一団に遭遇。しばらく眺めていたがまったく面白くないので先へと急いだ。

マングローブの目の前まで到着すると、群生するそのヒルギ林の中へと遊歩道が設置されていた。しかもウッドデッキスタイルのプロムナードである。アイポッドのスイッチをオフにして木製通路へと踏みこんだ。

デッキを奥へ奥へと進み緑一色の中へ埋没してゆく。あたりは静かで人っ子ひとりいない。遠くに講習会の一団が騒ぐざわめきがわずかに聞こえるだけだった。

自然の中の沈黙に包まれると、世界に絶対無音というものが無いことを改めて知る。

ヒルギの根元を洗う水、風でこすれ合うヒルギの葉、ときどき唄う虫の声、かすかな音量だが雄弁に語りかけてくる。

ここのヒルギ林は3種だった。”オヒルギ”は身にいっぱいの花をつけている。下方を向いた筒状で3cmほどの花弁が赤く色づいていた。

一方 ”メヒルギ”は白い清楚な花をつけている。ヒルギは夏に花を咲かせる。

ちなみに名の[オ]と[メ]は雌雄の別ではなく、まったく別種のヒルギである。(写真はガイドページに)

そして3つ目は”ヤエヤマヒルギ”という種で、やはり白い花をつけるが3種ともに形状は違う。

水位を見るとかなり低くなっている。干潮が始まったのだ。

ウッドデッキの遊歩道の端まで行き、ヒルギ林を眺めているうちにもっと奥へ入ってみたくなった。手段はカヤックしかない。干潮が進みすぎるとカヤックに乗れなくなるので、急いで公園まで戻ることにした。

最初こそバランスの取り方や両側に水かきのついたダブルパドルの漕ぎ方にとまどうが、水辺に出ればなんとかなってしまうのだ。

水辺から見るヒルギ林は見下ろしの風景よりも素顔に近い表情をしている。

汽水域(河口の淡水と海水の混じり合う水域)ながら水面下で塩分に抗しながら成長をつづける幹がタコの足のように交叉する。

上部からは緑多く花まで見せるヒルギだが、水面まで視点を下げると逞しい姿を見せてくれる。

ヒルギは他の植物に比べ二酸化炭素をはるかに多く吸収し、人類に必要な酸素を多く生成してくれるまことにありがたい樹木なのだ。

今まで東南アジアなどの亜熱帯地域に群生して、地球環境の保全に貢献してくれていたのだが、最近では海老の養殖場のため伐採され急激に減少しているという。

日本ではあまり馴染みがないため外国でのニュース出来事として知る程度だったが、しだいに国単位のレベルではなく地球規模の危機として意識されるようになってきた。

しかしマングローブ保護の意識が低いと云うだけで安易に責めることはできない。人間は頭で理解できても、身体で実感しないと本気にならない習性がある。自国にないものが危機に瀕していても実感の持ちようが無い。

郷里の自然が消失して初めてその価値を知る。ここ東村のヒルギ林は今話題になっている普天間基地の代替え案になっている名護市辺野古とは10kmほどの距離。いつ何時、人間の身勝手な理由で消失の危機に見舞われないとも限らないのである。

人間は忘れることも速いが、順応性も速い。こうして自然のマングローブ林に触れることでその危機感や保護意識の向上は確実に増すことになるだろう。

水上遊覧を愉しんでいたのだが、干潮が進み やむなく陸上に引き上げる。干潮の様子を観察するため再度プロムナードを歩くことにした。途中階段が設けてあり下に降りられる箇所があった。

もちろん階段最下段には柵止めがされており外にまで出ることはかなわないが、干潟地を観察するには十分だ。早くも干潟になった泥地から顔を出した小動物が活動を始めていた。

”シオマネキ”、”ミナミトビハゼ”に加え、鳥や昆虫まで発見できる。けっこうな種類の生物が生息しているようだ。もうしばらく彼らとつきあっていこう。


「慶佐次湾のマングローブ林」のガイドページへ


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