帰路の北部東海岸をひたすら南走           〜沖縄ちょぼ旅 BLOG 91〜

やんばる ロード 6

本島北端の辺戸岬などを訪ねたあと、那覇への帰途についた。当初の予定通り、往路で通った西海岸ではなく東海岸を南走する。これで北部海岸線を一周できるというあんばいである。

辺戸岬まで海岸沿いを北へと走っていた国道58号線も、最北端ポイントからは Uターンし南東へと大きくカーブする。しかも海岸線から離れて内陸へと方向を変えてゆき、国道は深々とした山中へとつづいている。

またまた現れた。これで3つ目の”ヤンバルクイナ、飛び出し注意”の看板だった。

このあたりが一番のロードキル多発地区らしい。ゆっくり走らねば....

その国道58号線も 「奥」 という地域で突然終わってしまった。

道が終わっているわけではなく、名前が国道58号線から県道70号線となるだけで、道はそのまま南へとつづいている。

しかしこの県道70号線あたりから道はふたたび海岸線に出た。

視界の左隅に海を感じながら走っていると、《美ら海 ニライカナイの海》と書かれた立て看板が目に飛び込んできたので急ブレーキをかけ停車する。

二ライカナイとは沖縄に伝わる海の果てにあるという楽土や理想郷のことである。しかしその浜辺は理想郷のイメージには似合わないほど岩礁が荒々しく突き出した自然のままの海岸だった。地図を見るとこのあたりは赤崎という地区であった。

なおも南下していると小さな橋を過ぎた。橋のそばに見える海が妙に明るく強烈なまでに青かったので、車をむりやり路肩に止める。しばらく車中から眺めていたが、浜辺へ出てみたくなりエンジンを切った。

青一色に染められた伊江の海岸

橋の名は伊江橋といった。橋の下を伊江川の流れが海へ注ぐため浜辺へと伸びていた。水量が少ないためか流れは湾曲しながら砂地に小川をつくっている。

空と海が真っ青に溶けたなか、ひとすじの白い線ができていた。沖合には長いサンゴ礁があるのだろう、長い線となって白く泡立っている。

手前の白い浜にはひとすじの青、浜辺を横ぎる伊江川がターコイズブルーに輝く。眼の前に広がる光景は青と白が重なるバームクーヘンだった。

伊江を出て30分近くも走っているがすっかり海岸線は見えなくなっていた。県道70号線はさらに山の中へと入ってゆく。

往路の西海岸沿いの58号線に比べ、この東海岸道路は内陸側や山中を抜ける経路が多い。単調なドライブに飽きはじめたとき、安波(あは)ダムという案内板が目に留まった。

安波ダムのクレスト(下流側)

案内板に誘われるようにハンドルを右に切り、県道から離れ深緑したたる山道へと進んだ。

樹林にはさまれた坂道を登りきると大きなパーキングエリアへと出た。

車をおりて回りを見渡したが見えるのは空ばかり。それだけで自分の立っている場所が一番の高所であることがわかる。

駐車場を歩き抜けると公園のように整備された遊歩道が前方へとつづいていた。ひとっこ一人いない。

プロムナードを歩く靴音以外まったくの無音である。道路の右側に「安波ダム管理支所」があった。

しかしその建物からも人の気配は無く、まるでビデオゲーム ”バイオハザード”の舞台となった「ラクーンシティ」のようだ。

道のぶつかったところはダムの堤頂部で、足元80m下には広大なダム湖が横たわっていた。


どうやらダムの右岸からアクセスしたようで、今いるポイントは安波川の上流に貯められたダム湖右岸であった。

正直に云うと、ダムというものを見るのも堤体に触るのも初体験。小説やドキュメントに登場するダムはひとつかふたつの村を飲み込みながら、村人たちの人生を大きく変え完成されてゆくといった類のものばかりだった。ダムに関してはそんな風化したようなイメージしか無く、また特別な関心も無かった。

しかし現実のダムを目の前にして印象が一変した。不自然なほど高低差のある巨大建築物がもつ圧倒的な迫力。明らかに自然が創りだす景観とは次元を異にした人の造り出した造形である。

今日本でもっとも報道され人気が集中してきた東京スカイツリーにも同種の感慨を感じた。新聞やテレビの報道で見るスカイツリーと業平橋(なりひらばし)駅のホームから見上げる生のスカイツリーでは雲泥の差なのである。

上流側に突き出た右岸展望広場(左)、上流側の堤体全景(右)

どうやらダムにひと目惚れをしたらしい。天端と呼ばれるダムの頂上部の道路を通りダム湖左岸に行ったり、展望台で休んだり、プロムナードの端から端まで歩いたりといつまでもグズグズとしてしまった。

この北部には5大ダムがあることを知ったが、すでに遅きに失した感がある。この2カ月半はバス旅行にこだわって旅したので、初手(はな)から交通便の悪いダムを除外していたのだ。

結局、陽が暮れなずむまでこのダム湖の右岸展望広場に居つづけ、長い一日の最後にした。この間、ただのひとりも人と会うことはなかった。

             陽が傾きはじめた右岸展望広場


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