2011年1月アーカイブ

少し飛ばし気味に車を走らせていた。沖縄本島南部の知念半島に敷かれた国道である。早朝の風が肌に心地よい。今日は沖縄を訪問して初めてフェリーによる離島渡りを予定している。

安座真(あざま)港から久高島行きのフェリーが9時に出発をする。起きぬけのコーヒーを一杯だけひっかけ飛び出してきたのだが、予想外に手間取ってしまった。

9時に間に合わなければ、高速艇ではないが10時にも一便があると聞いていた。

国道331号線の海岸線ドライブを楽しむため、アクセルをゆるめる。

風で泡立つ海面が朝日を照り返し、黄金色のモザイク模様をつくっていた。

安座真港からの久高島航路はふたつの船が一日6往復をしている。

高速船 「ニューくだか」と「フェリーくだか」だ。

久高島まで高速で15分、通常船で25分という手軽さで、乗船料も 「ニューくだか」 は往復で1410円、「フェリーくだか」 が1240円というお手頃料金である。久高島発の最終便が午後5時30分なので日帰りでもたっぷりと遊べる離島だ。

安座真港にある定期船待合所に着くと、ちょうど 「ニューくだか」 が出船するところであった。港湾を静かに滑り出す船を見送り待合所に入った。

次のフェリーは車が4台まで乗船できるとあって、車で行くという思いつきが頭をよぎった。さっそく売券売場のスタッフに相談すると、しきりに現地でのレンタルサイクルを勧められてしまった。

自転車で走り回る体力ありと判断してくれたのか、車で行かせると乱暴な運転をしかねないと思われたのか定かではなかったが、島の全長3km 周囲8kmというから小回りのきく自転車で回ることにした。

乗り込んだ 「フェリーくだか号」はまだ新しいのか、真っ白な船体からエンジン音も高らかに安座真港を出発した。後方に残されてゆく波しぶき、その向こうでは遠ざかる知念半島の山々を大きな雲の影がおおってゆく。

乗客が4家族からなる母子グループの一団と数人の客だけであったせいか、船内ではとてものどかな空気が流れており、期待どおり伸びやかな一日を予感させてくれていた。

デッキ前方で潮風を胸一杯吸い込みながらクルージング愉しんでいると早くも、前方に久高島と思しき島影が視界に入ってきた。

テトラポッドを積み上げた堤防を抜けると久高島の徳仁港

島に近づくと海岸線をぐるりとテトラポッドがうず高く積まれていた。さらに近づくとそのテトラは堤防を形成していた。もともと堤防を守るためのものだから、堤防そのものに使用して悪いわけがないのだろう。

岸とその堤防に挟まれた水路に入ると久高島の表玄関とも云われる 「徳仁港(とくじんこう)」 に着いた。 折しも港は大工事の真っ最中であった。(2011年現在は、新しい桟橋埠頭や丘上にはしゃれた待合所が完成している)

                      丘上では久高島の石標が徳仁港を見下ろしていた

下船してあたりを見回したが桟橋埠頭以外施設らしきものは何も見当たらず、桟橋から丘上へと一本道があるばかり。

丘を登り切ると久高島と掘られた石標が建てられている。

この位置まで来て、初めて久高島の土地が海岸部よりかなり高所にあることが理解できた。

やっと 《レンタサイクル》 のあるお店を発見し飛び込んだのだが....5、6台あった自転車はいずれも旧式で小ぶりなものばかり。

すでにここにいたっては選択肢が無いわけで、いさぎよく1台にまたがり出発を断行することとなった。MAPを片手に時計回りに島を一周することにしたのである。

しばらく道を走ったのだが道路の凹凸がそのまま身体を直撃してくる。車輪の空気圧をチェックしたが問題は無さそうである。このひどい乗り心地は、どうやら小型で旧式であることから発生しているようだ。

しかも大の男が乗るにはかなり小さい自転車だった。他所から見れば、まるでサーカスに登場する熊の自転車乗りである。気をとり直し自転車漕ぎを再開した。

「タチ浜」への小さな案内板は手づくり

自転車と格闘しながら走っていると可愛らしい案内板を発見。魚の形に切り抜かれ青く塗られている。

木板には「タチ浜」とあった。

その場所の東南側には道路に沿ってアダンの樹林が生い茂って視界をさえぎっている。

案内板の近くをよく観察すると、樹林の中にうっすらと道らしきものを確認できた。さっそく、自転車を置きそこに踏み入ってみた。

く ぐり抜けるようにその道を進むとついに海岸へと出た。

そこの海岸、つまり 「タチ浜」 と呼ばれる浜辺はまるで手つかずの天然海岸だった。今まで沖縄本島の浜辺ではお目にかかれなかったビーチラインが眼前に広がっている。

造礁サンゴによるライムストーンと目の粗い砂がせめぎ合うように混在し、形状変化をした石灰岩と大粒の白い砂が独特の天然画を創り出していた。

海岸を見渡しても人っ子ひとり見えない。何となく嬉しくなってきた。この瞬間、この海を独り占めしている!

独創的な造形を展開する久高島の 「タチ浜」


久高島 タチ浜

住所 南城市字久高

宿泊関連問合せ
 久高島宿泊交流館

 098-835-8919

交通
 那覇空港より 40分(国道329号線を与那原方面へ−与那原警察署前で国道331号線へ−安座真港入口の信号を左折
BUS 那覇BTから50分−バス停 「安座真サンサンビーチ入口」 徒歩5分
定期船 安座真港から15~25分−久高島船待合所 自転車10分


久高島の最初に訪れた海岸 「タチ浜」で潮の香りを愉しみながら島の先端へと海岸を北上した。浜を占拠していた石灰岩礁がしだいに消え、きれいな砂でおおわれたビーチに姿を変えた。

アダンの木陰で涼みながら眺める自然の海は格別で、聞こえてくる音も自然界が奏でるものばかりだ。まるで南太平洋の孤島にいるような感覚にハマってしまった。

まるで南海の孤島のように天然のままの海岸 「イシキ浜」

風に乗った笑い声が かすかに聞こえてきた。木陰から出て伸びあがって見まわすと、ずっと先の海辺で泳ぎ戯れる豆粒のような人影が見える。

この清閑なビーチにもついに訪問者がやって来たようだ。これを潮に島一周の旅を再開した。そのまま浜辺を北へ進むと、遠浅の沖合で海水浴を楽しんでいるのは親子連れのひと家族だった。この広いビーチをその一家に明け渡し自転車のところまで戻ることにした。

                              「イシキ浜」を知らせる手製の魚形案内板

その途中でまたひとつ 手作りの案内板を発見した。

こちらのビーチは「イシキ浜」と呼ばれていた。漢字で書くと伊敷浜と表記するらしい。

ここのビーチは7、800 mもつづく長大な浜辺で、場所によって浜辺名が異なっていた。

徳仁港に近いほうから「ピザ浜」、「イチャジキ浜」、「タチ浜」そして「イシキ浜」と呼ばれている。


ふたたび尾てい骨を直撃する自転車で島の北部を目指す。何事も慣れると こなれてくるものらしい。しばらく走るうちに、でこぼこ道でも衝撃を吸収できるようになってきた。

乗り慣れてきた自転車を機嫌よく走らせて行くと、道が真っ白な一本道となった。島の北端にある「カベール岬」へとつながる自然道だ。白い道の両側は緑が茂り、綺麗に定規で引いたように北東へ伸びている。

久高島に関しては昨夜少し予習したので、おおよその注意事項を頭に入れてきていた。島でも神聖な場所がこの北域に集中しているので、心ない訪問にならぬよう気をつけねばならない。

琉球興しの神であり始祖である”アマミキヨ”が、東のはるか洋上に浮かぶという理想郷「ニライカナイ」からやって来て、久高島に初めて降り立った場所がその「カベール岬」であったという伝説が伝わっている。

ハマユウなどの植物で緑があふれる「カベール岬」

白い道が終わり、急に視界が広がる。一面に色鮮やかな緑の植物群をたくわえた「カベール岬」だった。

小高い丘といった風貌の岬で、白い花をつけたハマユウやヒルガオなど低草群が砂地で生き生きとしている。

その緑の絨毯を越え、先端まで歩を進めると足元には素晴らしい浜辺が待っていた。


楚々とした磯はまるで隠れるように静まりかえっている。岬となっている小高い石灰岩礁が出入りの激しい複雑な海岸線のため、大小複数の入江が形成されていた。

そのどれもが個性的で隠し入江のごとく ひっそりとした佇まいを見せている。岬には案内説明板がひとつ立てられており、聖地とあった。

先ほど訪れた「イシキ浜」も島民からは二ライカナイに面する聖なる浜として大事にされており、今も祭祀用拝所が設けられている。どうやら観光客の遊泳は遠慮した方が無難な海辺であった。

「カベール岬」周辺の海岸線には離島らしい個性的な入江がいくつも広がる

岬の入江景観の美しさに魅せられて しばらくいたのだが、太陽直下の強烈な日差しを避ける場所もなく、やむなく西側の海岸線を求めて周遊をつづけることにした。

例の白い一本道を少し戻るとY字形の分かれ道が現れたので、ハンドルを右の西へと向けた。前方にフェンスにぐるりと囲まれた大型プールのような施設が出現。

                      島の北部中央にある貯水池

フェンス越しにのぞいて見ると正方形をした貯水池だった。

生活用水は島の北側に湧き出しているガー(井戸)がいくつかあるので、ここは農業用水と思われる。

島の生計主体は漁業なのだが、昔より自家用農業も重要な作事で水は不可欠だ。

この貯水池を過ぎたあたりでぶつかったY字路をさらに北西の海側へとペダルを踏み込んだ。

この舗装された綺麗な道路はロマンスロードと名付けられていた。

貸し自転車のお店を出てから出会ったのは、農作業のための移動と思われる軽自動車と海岸で遭遇したひと家族だけ。タイミングが良かったのだろうが、自分ひとりだけのサイクリングは極上の時間となった。

しかもこの道は舗装されている! ロマンスロードは海岸沿いに約500mほどつづき、そこから眺める海の色は並はずれた美しさだった。

 みはるかす海の向こうに浮かぶのは聖なる遥拝所の「斎場御嶽」のある本島知念岬


久高島 カベール岬

住所 南城市字久高

宿泊関連問合せ
 久高島宿泊交流館

 098-835-8919

交通
 那覇空港より 40分(国道329号線を与那原方面へ−与那原警察署前で国道331号線へ−安座真港入口の信号を左折
BUS 那覇BTから50分−バス停 「安座真サンサンビーチ入口」 徒歩5分
定期船 安座真港から15~25分−久高島船待合所 自転車20分




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