FAREWELL....沖縄 (最終回)           〜沖縄ちょぼ旅 BLOG 104〜

那覇空港から見える離島がこんなに多いとは想像もしていなかった。空港ターミナルの3 階にはそんな眺望を楽しむことができる場所がある。

滑走路の先には東シナ海に浮かぶ島々が幾層にも重なって濃淡をつくっている。空港から南西に30 kから40 kもある洋上に見せる慶良間諸島までが視認できた。

2 階のキッズエリアから遊び騒ぐ子供たちのはじけた声が吹き抜けでつながる3 階にまで届いてくる。彼らのはしゃぐ声は、島々に見とれる筆者を容赦なく現実に引き戻す強さがあった。

滑走路に隣接する東シナ海に、ハテ島、黒島そしてその向こうには慶良間諸島の姿が

ついに沖縄に別れを告げる日がやってきた。3ヶ月近くの 長いようで とても短い時間が過ぎ去っていた。軽い寂寥感が胸をすり抜けてゆく。

沖縄に滞在中の筆者を尋ねてくれた友人と合流して一週間。この最後の一週間は怒涛のように速く過ぎてしまった。友人の第一希望だった世界遺産を中心に組み立てたスケジュールだったが、世界遺産ルートに近いスポットや経路途中にある要所を目一杯に豪遊した。

この一週間、まるで何年も住んでいたかのように得意気に案内する筆者を、友人は寛大にも文句ひとつ言わず聞き流し つき合ってくれた。その彼は今バスで糸満に向かった。東京への便が筆者より数時間あとなので、糸満港をぶらつくことにしたのだ。

帰りの便を同行するため、無理やり変更したりしない野郎同志のつきあいというのは実によい。どこかに透き間があり、楽に息づくことができる。

眺望が楽しめる3階のフロアには紫色の花が咲き乱れていた。もちろんディスプレーのため備え付けられたプラントなのだが、花は本物だ。なぜかこの花に確かな見覚えと懐かしさを感じたので調べてみた。

盛夏に咲き始め、いち速く秋の到来を知らせるコートダジュールという花だった。ブラジルが原産にもかかわらずフランス南部の沿岸地の名が冠せられている。地中海に面する紺碧海岸をイメージして付けられたのだろうか。沖縄では普通に野山に自生すると聞いた。

コートダジュールと呼ばれる紫色の花がターミナル内に咲き乱れていた

15年以上も前に出逢った花に酷似していた。場所は海外出張時の南仏でのことだった。

1週間もつづくコンベションの合間に10人以上の団体でカンヌを脱出し、モナコに向かう途中で夕食会のため訪れたレストランでこの花を見た。電気も敷設されていない地元で有名な古牧場をそのまま利用したレストランだった。

照明はすべてキャンドルである。おびただしい数のろうそくに浮かび上がる異観の風景は呼吸を忘れるほどに美しかった。晩餐会での騒がしい会話に少々疲れて 煙草を吸うため屋外に出ると、牧場の建物のまわりに咲いていた花が囲い塀の柵上に灯されたろうそくで浮かび上がっていた。

月明かりのもと、濃い紫色の花を眺めながら一服する筆者のそばで音がした。近くで休憩をとっていた使用人と思しき女性があわてて建物へ戻ろうとしたのだ。休憩の邪魔をしたようで思わず彼女の背中に声をかけてしまった。英語で....「煙草を吸ったらすぐにテーブルへ戻るんだけど!」

「好きなだけ 吸っても構わないですよ...」と国粋主義人の多いフランスで奇跡的に英語の返事が返ってきた。下手な英語で話しかける筆者に安心したのか、彼女はもとの場所に戻り腰かけた。

人生のはるかに先輩格になる年配のそのフランス女性としばらく会話を交わすことになった。その時に牧場のまわりに咲くこの花の言い伝えを聞いた。

空港内の大型水槽で泳ぐ魚たち

ふだんは濃いあざやかな紫の花だが、嘘つきがみると 紫の色がこぼれ落ちピンク色に見えるという。

しかも面白いことに他人に対してつく嘘ではなく、自己に嘘をつく人だけがピンク色に見えてしまう稀少な花だと説明してくれた。

《自己につく嘘》 つまり自分をごまかすための嘘とか現実からの逃避をすること。そんな人が見るとピンク色に見えるらしい。

人の心がもっとも弱っているときにその危険を知らせてくれる不思議な花だと信じられていた。

このややこしい伝承を理解するのに お互いありったけの英単語と時間を要したことを覚えている。今ではフランス語で聞いた花の名は忘れてしまったが、姿や色は鮮明に覚えている。

15年前のその夜、幸いにも筆者の目にはあざやかな紫色に輝いていた。そして今ここ那覇空港でも そのように見える。

沖縄に滞在したこの3か月、何とか自己に正直であったように思う。

ずいぶん横道へそれてしまった。さて沖縄旅行のことである。出発時間まで空港内をそぞろ歩いていたが、いよいよゲートへ向かう時間がきた。見送ってくれたのは水槽で悠々と泳ぐ派手な衣装をまとった魚たち。

友人と巡ったこの最後の一週間だがひとつ思うことがあった。回った地はいずれも筆者にとって再訪地だったのだが、それぞれのスポットで改めて新しい面白さを再発見できたことだ。

これまで時間の許す限りじっくりと見学したはずなのだが、ぽろりポロリと興趣のポイントを見落としていたようだ。そのため訪問地では友人そっちのけで自分勝手な行動をさせてもらった。友人もまた思うがままのコースを歩き、何となく出口あたりで落ち合い次に向かうといった具合だった。

筆者も友人も ともにB型である。世間で喧伝されている血液型判断も 的を射ていることがあるようだ。B型人間は夢中になると身勝手な行動が過ぎると、他の血液型から後ろ指を差されているらしい。

勝連城の二の郭殿舎跡をうろつく筆者

そんな旅行経緯の中で友人の撮ったという写真を旅行後に入手した。写真やカメラでは大先輩になる彼がいつ撮影していたのか思いがけない一葉であった。

A4サイズに紙焼きされたモノクローム写真、古城跡を自分勝手にうろつく筆者のロングショットである。今まで104回つづいたブログで筆者の写真は一枚もアップする機会がなかったので、最後の回に登場させることにした。(ただしこのアップした写真は筆者の粗放なスキャニングによるもの)

乗り込んだ飛行機は定刻通り那覇空港を飛び立ち東京へと向かった。窓外は小憎らしいほど上天気である。正直に告白すると心の中にはまだまだ沖縄に居たいという未練だけが残滓のように残っていた。

沖縄戦争のことも もっと調べてみたいし、名もなき戦場も訪ねてみたい。周辺の離島を ゆるりと滞在して呆けてみたい。沖縄のダムをすべて制覇したい....次々に宿題が浮かびあがってきた。

近い将来、沖縄を再び訪れる強い予感がしてきた。旅が再開されるまでこのブログ、しばらく小休止としたい。

最後にひとつご報告。実は筆者も友人の勝手な素行を写真におさめていたようで、旅行後の写真整理の際に発見した。身勝手ついでに、いまだ友人も見ていないこの写真、許可なしだが公開することにした。

....では近いうちにまた、お話をしましょう....

沖縄本島最南端に位置する具志川城壁にとりつきシャッターを切る友人

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